エルヴェ・クビ『蛮族たちの夜、あるいは世界の始まりの朝』 Barbarian Nights

バレエ

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アルジェリア系フランス人の振付家が、自身のルーツを探求。北アフリカ出身の筋骨たくましい男性ダンサーたちが、いにしえの地中海世界を神秘的かつ厳かに舞う。 エルヴェ・クビは、地中海沿岸のカンヌ出身。舞踊家・振付家としてのキャリアを築くかたわら、地元の南フランスで薬理学と臨床生物学の博士号を取得した異色の経歴の持ち主です。2000年のデビュー作『ゴーレム』以来、コンスタントに良作を発表してきたクビは、2009年、北アフリカでオーディションを行い、アルジェリアおよびブルキナ・ファソ出身の12名の男性ダンサーから成るカンパニーを誕生させました。この頃からクビは、両親の故郷アルジェリアへの関心を強め、北アフリカを中心に、地中海世界をテーマとする舞踊作品を次々に手がけるようになります。 この番組は、クビが2015年に発表した『蛮族たちの夜、あるいは世界の始まりの朝』の2017年ニースでの再演。12名の男性ダンサーたちが、コンテンポラリー・ダンス、ヒップ・ホップ、カポエイラなどを融合させた独特の振付で、いにしえの地中海世界を表現。ゆるやかなテンポの中で繰り広げられるアクロバティックな動きや、装飾性を極限まで廃した舞台が、作品の神秘性を際立たせています。 ダンサーたちが演じるのは、かつて東方・北方・南方から地中海世界を脅かした様々な「蛮族たちbarbares」。クビ自身は、フン族、ケルト人、バンダル人、ゴート族、ペルシア人などを想定したと明かしており、異民族による地中海世界への侵攻は、対立・分裂・殺戮よりもいっそう多くの結束・混交・婚姻関係をもたらしたと説いています。じっさい本作でも、ダンサーたちは、当初携えていた武器をやがて手放します。なおクビは、本作に明瞭な「政治的」メッセージを込めたと明言しており、過去幾世紀ものあいだ、北アフリカではユダヤ教徒、キリスト教徒、そして異教徒が平和に共存していたことを指摘しています。 音楽は、ワーグナーの『ラインの黄金』やモーツァルトとフォーレの『レクイエム』(抜粋)などのほか、アルジェリアの伝統音楽も盛り込まれており、じつに折衷的。大胆な編曲・構成によって、全体として自然な流れを与えられ、種々の儀式の演出に一役買っています。筋骨たくましいダンサーたちの肉体美や、スワロフスキー・クリスタルがあしらわれた美しい仮面も、シンプルな舞台や衣裳の中で映え、目を引きます。 [出演]エルヴェ・クビ・カンパニー[振付]エルヴェ・クビ[音楽]ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ガブリエル・フォーレ、リヒャルト・ワーグナー、マクシム・ボドソン、アルジェリアの伝統音楽[衣裳&宝飾デザイン]ギヨーム・ガブリエル[照明]リオネル・ブゾニー[収録]2017年5月ニース国立劇場(フランス)[映像監督]パトリック・ラウゼ ■約1時間6分

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