ペルゴレージ・スポンティーニ・フェスティバル2011『恋に陥った兄と妹』 Pergolesi Lo Frate nnamorato

オペラ

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モーツァルトやロッシーニに影響を与えたオペラ喜劇の原点。ビオンディ率いるエウローパ・ガランテの古楽が鮮やかなペルゴレージの知られざる傑作。 イタリアのナポリ楽派の作曲家で、わずか26歳の若さで夭折したジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710~1736)は、18世紀前半にオペラ・ブッファ(喜劇的オペラ)の基礎を築き、その後のモーツァルトやロッシーニに大きな影響を与えた作曲家として音楽史に名を刻んでいます。 ペルゴレージ生誕300年を記念して、2010年から1年がかりで行われたプロジェクト「Tutto Pergolesi トゥット・ペルゴレージ(すべてペルゴレージ)」は、ペルゴレージの生地マルケ州イェージで彼の作品研究を長年行っているペルゴレージ・スポンティーニ財団が主導となり、彼の人気曲から上演機会の少ない作品まで、さまざまなオペラや宗教曲・器楽曲を取り上げた記念碑的イベントとして、世界的に大きな話題を呼びました。会場の、その名も「テアトロ・ペルゴレージ」は、イタリアでも数少ない、18世紀前半に創建されたままの姿を残す劇場のひとつです。 1732年に作曲された『恋に陥った兄と妹』は、オペラ・ブッファの最初期に位置する作品であり、ペルゴレージ自身にとって初の成功作でした。現在では上演機会のきわめて少ない、忘れられた名作です。 物語はイタリアの2つの家族の、ちょっと複雑に入り組んだ恋愛喜劇。男やもめマルカニエッロには、バカ息子のドン・ピエトロと、娘のルグレツィア、そして養子の息子アスカニオ(ズボン役)がいます。一方、やはり妻のない初老の富豪カルロは、亡兄の二人の娘ネーナとニーナを引き取って自分の子供として育ててきました。ややこしいのは、マルカニエッロはニーナを自分の嫁に、ネーナを息子ドン・ピエトロの嫁に迎えようと企み、かたやカルロはルグレツィアを妻にしようと企んでいること。利害の一致した父親二人は、それぞれの縁談を進めようと懸命です。ところが3人の娘たちは全員、アスカニオに思いを寄せているのです。当のアスカニオも、ルグレツィアが好きなのですが、養子とはいえ兄妹として育った間柄。彼女の思いを受け入れることができません。これがオペラのタイトル『恋に陥った兄と妹』の由縁です。最後には、アスカニオが、ニーナとネーナが幼い頃に生き別れた実の兄ルッチオだったことが判明する大どんでん返し。吹っ切れたアスカニオはルグレツィアに求婚します。 そんなドタバタを生き生きとした音楽で綴った傑作を、古楽の雄ファビオ・ビオンディ率いるピリオド・オーケストラ、エウローパ・ガランテが、メリハリの利いた鮮やかな色合いで描き出します。ビオンディはオーケストラ・ピットでもいつものとおりヴァイオリンを手に、弾き振りです。 歌手陣も、ネーナ役のソプラノ、パトリツィア・ビッチーレをはじめとする古楽のエキスパート揃い。全員が雑味のないすっきりとした美しい歌唱で、それでいて演技の表現も達者。申し分のないキャスティングで、バロックのオペラ・ブッファが、すでに音楽面でも、モーツァルトやロッシーニらの喜劇作品のベースとなる完成度を示していたことに、あらためて気づかされます。 演出は現代への読み替え。映画『ローマの休日』でおなじみのスクーター「ヴェスパ」も登場するので、1950年代頃のイタリアと思わせる設定ですが、音楽にも台本にも実に無理なくマッチしていて、ドタバタ恋愛劇が自然に楽しめる番組です。 [出演]ニコラ・アライモ(マルカニエッロ/バリトン)エレーナ・ベルフィオーレ(アスカニオ/メゾ・ソプラノ)パトリツィア・ビッチーレ(ネーナ/ソプラノ)ユルギータ・アダモニテ(ニーナ/メゾ・ソプラノ)バルバラ・ディ・カストリ(ルッグレツィア/メゾ・ソプラノ)ダヴィド・アレグレト(カルロ/テノール)ラウラ・ケリーチ(ヴァンネッラ/ソプラノ)ローザ・ボーヴェ(カルデッラ/メゾ・ソプラノ)フィリッポ・モラーチェ(ドン・ピエトロ/バス) [演目]ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ:3幕のコンメディア・ペル・ムジカ『恋に陥った兄と妹』(フランチェスコ・デグラーダ校訂によるクリティカル・エディション)[台本]ジェンナラントニオ・フェデリーコ[演出&装置]ウィリー・ランディン[衣裳]エレナ・チコレッラ[照明]ファブリツィオ・ゴッビ[指揮&ヴァイオリン、ヴィオラ・ダモーレ]ファビオ・ビオンディ[演奏]エウローパ・ガランテ[収録]2011年9月30日&10月2日テアトロ・ペルゴレージ(イェージ、イタリア・マルケ州)「ペルゴレージ・スポンティーニ・フェスティバル2011」[映像監督]ティツィアーノ・マンチーニ ■字幕/全3幕:約2時間41分

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