ヤンソンス&ウィーン・フィル定期公演2019 SUBSCRIPTION CONCERT - MARISS JANSONS CONDUCTS SCHUMANN AND BERLIOZ

配信終了:2020年03月03日 23:59

コンサート

  • 1時間45分
  • 2019
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追悼マリス・ヤンソンス。つねにオーケストラに寄り添って親密な音楽を引き出した稀有な巨匠。2019年6月、ウィーン・フィルとの最後の定期公演。  日本時間の2019年12月1日夜、突然の悲しい訃報が飛び込んできました。旧ソ連出身の世界的指揮者マリス・ヤンソンスが、11月30日にサンクトペテルブルクの自宅で逝去したことを、首席指揮者を務めるバイエルン放送交響楽団が発表しました。76歳でした。番組は2019年6月のウィーン・フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会でシューマンの交響曲第1番とベルリオーズの幻想交響曲を指揮した映像です。結果的にこれがウィーン・フィルとの最後の定期公演となってしまいました。  ヤンソンスは大指揮者アルヴィド・ヤンソンスの息子として1943年にラトヴィアのリガに生まれました。レニングラード音楽院に学び、ザルツブルクでカラヤンに師事。1970年代にレニングラード・フィルハーモニー交響楽団でエフゲニー・ムラヴィンスキーのアシスタントとなり、1977年(34歳)に同楽団とともに初来日。1986年の来日公演では、病気降板したムラヴィンスキーに代わって全公演を指揮して、オーケストラからムラヴィンスキーとまったく異なる音楽を引き出しましたが、ファンはどうしても巨匠と比較してしまうためか、この時はまだ賛否両論がありました。  ヤンソンスがその真価を目に見えて発揮し始めたのは1990年代からです。1979年から首席指揮者を務めていたオスロ・フィルハーモニー管弦楽団を世界の一流オーケストラに育て上げ、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者(1992~1997年)、ピッツバーグ交響楽団の音楽監督(1997~2004年)を歴任して、着実に名声を重ねました。そのさなか、1996年には心臓発作で一度生命の危機に瀕し、その後は活動の制限を余儀なくされることになりますが、2003年にバイエルン放送交響楽団、2004年にアムステルダムの名門ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(~2015年)と、立て続けに世界のトップ・オーケストラの首席指揮者に就任し、名実ともに世界的指揮者として活躍を続けていました。この両楽団とは繰り返し来日を果たしており、2012年のバイエルン放送響とのベートーヴェン交響曲チクルスは、ミュージック・ペンクラブ・ジャパンの選ぶ外来アーティストによる年間ベスト・コンサートに輝いています。  ウィーン国立音楽アカデミー(現ウィーン国立音楽大学)でハンス・スワロフスキーに師事した経歴も持つヤンソンス。ウィーン・フィルとは1992年4月にチャイコフスキーの『悲愴』を指揮して初共演。その後たびたび定期演奏会に登場するとともに、3度のニューイヤー・コンサート(2006年、2012年、2016年)を含む多くのコンサートを指揮。近年ではザルツブルク音楽祭で指揮したショスタコーヴィチ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』(2017年)やチャイコフスキー『スペードの女王』(2018年)の2つのオペラも大きな注目を集めました。  けっして扇情的に個性を振りかざすことなく、プレーヤーに寄り添い、一人ひとりからベストのパフォーマンスを引き出すような音楽づくりをする、稀有な指揮者でした。このウィーン・フィルとのシューマンとベルリオーズでも、楽員たちが自主的に楽譜と向き合いながら音楽を作っているのが、映像からもありありと伝わってくるように感じます。指揮棒をおいて振るシューマンの第2楽章のなんと親密なこと。もちろん、それでいて、どの演奏にも確実に、そして濃厚に「ヤンソンス」が刻印されているのが彼の凄みでもあります。結局オーケストラは、お釈迦様の掌の上の孫悟空のように、ヤンソンスの魔術で操られているのかもしれません。『幻想交響曲』の最後の総奏が鳴り終えて、一瞬の静寂をおいて湧き起こるブラヴォーと大きな拍手は、そのたぐいまれなイリュージョンに対する喝采です。  舞台での足取りや指揮台の昇り降りがやや慎重には見えますが、椅子なしで、手すりに寄りかかることもなく全曲を振る姿はエネルギーは満ちており、映像からは、この両者の芸術がまだまだ私たちを楽しませてくれるとしか思えず、残念でなりません。結果的に貴重な映像となってしまいました。 冥福を心より祈ります。 [演目]ロベルト・アレクサンダー・シューマン:交響曲第1番変ロ長調Op.38『春』、エクトル・ベルリオーズ:幻想交響曲Op.14[指揮]マリス・ヤンソンス[演奏]ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団[収録]2019年6月ムジークフェラインザール(ウィーン)[映像監督]ディック・カイス ■1時間45分(番組枠)

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