ローマ歌劇場2017『ファウストの劫罰』 Teatro dell'Opera di Roma:LA DAMNATION DE FAUST

配信開始:2020年03月01日 06:00

オペラ

  • 2時間12分
  • 2017
  • -

-

ベルリオーズの劇的物語が鬼才ダミアーノ・ミキエレット演出によるオペラ上演として話題沸騰のローマ歌劇場公演!指揮は2018年12月より同歌劇場音楽監督に就任したダニエレ・ガッティ。 2017年12月にローマ歌劇場で行われた、ベルリオーズ『ファウストの劫罰』のオペラ形式上演。トリノのテアトロ・レージョおよびバレンシアのソフィア王妃芸術宮殿との共同制作のプロダクションです。  ベルリオーズはこの作品を「劇的物語」と名付けて、オラトリオでもオペラでもない新たなジャンルと位置づけており、実際、超現実的な瞬間移動などもあるように、劇場空間の制約に捉われることなく自由に構想された作品なのですが、特に近年はオペラ形式での上演も増えています。この番組がそうであるように、舞台上で映像を駆使するなど、舞台表現の多様化やその技術的向上を反映している現象だと言えそうです。 題名の「ファウスト」からわかるとおり、ドイツの文豪ゲーテの長編戯曲『ファウスト』に基づく作品ですが、細部にはベルリオーズの創作が自由に織り込まれています。学問によって宇宙の原理を究めた老ファウスト博士は、残りの人生の倦怠をはかなんで自殺をはかりますが、悪魔メフィストフェレスに誘われ、世の中の享楽を味わい尽くしに出かけます。やがて少女マルグリートと恋に落ち、その彼女を失った失意のなか、原作では救済されるはずのファウストは、地獄へと堕ちてゆきます。 鬼才ダミアーノ・ミキエレットの演出が創り出したファウストは、叡智を手にした老博士ではなく、病院のベッドで手術を待つ、どこにでもいそうな青年です。最初はけっして死の病に冒されているようには見えないのですが、夢と現実の間を行き来するようにしながら徐々に死のイメージに取り憑かれてゆくのは、メフィストフェレスの魔力のしわざなのでしょう。さまざまな悪夢や幼い日の思い出が脳裏に浮かぶなか、どうやら現実の存在は、愛するマルグリートだけのようです。この作品が、死をテーマにした重苦しいファンタジーであるという側面が、オラトリオ形式で音楽だけを聴いているときよりもずっと鮮明に伝わってきます。 舞台背後のスクリーンは、ときにファウストの脳内イメージを映し出し、あるときはステージ上のドラマを実況中継し、また映像と舞台上の生身の演者とが一体化する異次元のトンネルでもあります。そしてミキエレットはそこに、シーンごとに「1.夜」「2.魔法」「3.恐怖」「4.父」「5.郷愁」「6.欺瞞」「7.前兆」「8.欲望」「9.愛情」「10.王女とドラゴン」「11.快楽の園」「12.期待」「13.犠牲」「14.劫罰」「15.祈り」と、原曲とは異なる場面タイトルを映して、観衆の理解を助けるヒントとしています。合唱を紗幕の背後に隠して、演技や動きなしで歌わせたのも、ステージ上の独唱者たちを際立たせて「オペラらしさ」を強調する有効なアイディアとなっています。 主人公ファウスト役のパヴェル・チェルノフは1974年生まれのチェコのテノール。2009年バイエルン州立歌劇場でのヤナーチェク『イェヌーファ』シュテヴァ役でデビュー以来、ヨーロッパの主要歌劇場から引っ張りだこの注目株は、幅広い表現力を持った美声を駆使して、ミキエレットの独特なファウスト像を陰影深く描き出しています。メフィストフェレスはイタリアのバス・バリトン、アレックス・エスポージト。モーツァルトやロッシーニでの活躍が知られる軽妙な歌い手ですが、ここでは、なんとも不気味な悪魔を憎々しげに演じます。そして、メフィストに陵辱されるシーンなどで体当たりの演技を見せるマルグリートを演じているのが、ご当地ローマ生まれのヴェロニカ・シメオーニ。ベッリーニやドニゼッティのベルカント・オペラからヴェルディ、プッチーニまで、さらにバッハの宗教曲からワーグナーの歌曲まで、幅広いレパートリーを誇る人気メゾ・ソプラノです。彼女が歌う有名な「トゥーレの王」は見どころのひとつ。 指揮は、2018年12月にローマ歌劇場音楽監督に就任したダニエレ・ガッティ。1年前の本公演でも、手堅く音楽を進めながら、この不思議なファンタジーに絶妙のテンポを与えています。 [出演]パヴェル・チェルノフ(ファウスト/テノール)アレックス・エスポージト(メフィストフェレス/バス・バリトン)ヴェロニカ・シメオーニ(マルグリート/メゾ・ソプラノ)ゴラン・ユリッチ(ブランデル/バス) [演目]エクトール・ベルリオーズ:4部の劇的物語『ファウストの劫罰』Op.24[台本]アルミール・ガンドニエール&エクトール・ベルリオーズ[原作]ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの詩劇『ファウスト』のジェラール・ド・ネルヴァルによるフランス語訳[演出]ダミアーノ・ミキエレット[装置]パオロ・ファンティン[衣裳]カルラ・テーティ[照明]アレッサンドロ・カルレッティ[ビデオ]ロカ・フィルム[パントマイム]キアーラ・ヴェッキ[指揮]ダニエレ・ガッティ[演奏]ローマ歌劇場管弦楽団及び同合唱団、同合唱学校[合唱指揮]ロベルト・ガッビアーニ[収録]2017年12月14日ローマ歌劇場[映像監督]クラウディア・デ・トーマ ■字幕/全15場:約2時間12分

おすすめ