クリスティのヘンデル『テオドーラ』 Theodora

配信終了:2020年04月27日 23:59

オペラ

  • 3時間5分
  • 2015
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ヘンデル自身が誇りを持って傑作と自認した名曲。古楽界の王様ウィリアム・クリスティが、充実のキャストと手兵レザール・フロリサンを率いて、満を持しての舞台上演! オラトリオ『テオドーラ』は、1750年にロンドンのコヴェント・ガーデン王立劇場で初演されたゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685~1759)晩年の傑作です。この番組は、2015年パリのシャンゼリゼ劇場で、古楽の大御所ウィリアム・クリスティが手兵レザール・フロリサンを率いて行なった演出付舞台上演。 全31曲とされるヘンデルのオラトリオの中で、宗教的作品の多くは旧約聖書に題材を求めていますが、この『テオドーラ』は、紀元4世紀のローマ帝国でキリスト教迫害によって殉教した聖女を描いた17世紀の小説に基づいています。道徳的な正義と敬虔な信仰に献身する気高さは、敬虔なキリスト教者だったヘンデルにとって重要なテーマであり、それゆえ彼自身の信仰告白とも位置付けられる重要な作品です。「ハレルヤ・コーラス」(メサイア)があなたの最高傑作かと尋ねられたヘンデルが、『テオドーラ』第2幕の最終合唱「彼は愛らしい若者を見た」のほうがはるかに優れていると答えたことが知られています。 この作品を意欲的に取り上げ、作品の知名度アップに大きく貢献しているのがウィリアム・クリスティです。彼が1996年グラインドボーン音楽祭で取り上げて以来、作品の素晴らしさが広く注目されるようになり、2002年には当番組と同じレザール・フロリサンと共に歴史的名盤を録音しています。今回は、彼らの本拠地パリでは初めてとなる、この作品の演出付上演に挑みました。 舞台空間の制約や、装置、歌手の演技といったオペラの論理にしばられることがないオラトリオは、ヘンデルにとって、より自由な音楽劇の創作が可能なジャンルでした。一方で、彼はオラトリオのスコアに、しばしば細かいト書きを書き込んでおり、それらの演出付舞台上演を視野に入れていたことも窺われます。  この演出は、2019年春からグラインドボーン音楽祭の芸術監督に就任することでも話題のスティーブン・ラングリッジ。彼は、帝政ローマをムッソリーニ時代のイタリアに置き換えました。レジスタンスの女性闘士テオドーラは、自由な信仰を守るために権力に立ち向かいます。その恋人ディディムスは、彼女を愛するがあまりにレジスタンスに協力する国軍の兵士。可動式の壁を設えたシンプルな舞台には、大道具らしい大道具といえば、権力者の頭像が登場するぐらい。作品のドラマツルギーを伝えるには十分かつ巧みな仕掛けです。 テオドーラ役には英国の若いソプラノ、キャサリン・ワトソン。澄んだ声と豊かな表現力を持ったクリスティの秘蔵っ子は、幅広いレパートリーで活躍中の注目株です。その恋人ディディムスは、カウンターテナー界の貴公子フィリップ・ジャルスキー。安定した透明な発声と舌を巻くメリスマの歌唱で、愛する恋人を救う男の凛々しさと勇敢さを見事に歌いきっています。それぞれのアリアはもちろん、細部までヴィブラートをコントロールして歌う二人のアンサンブルは絶品で、とりわけ終幕近く、信仰のために死を受け入れる二人のデュエット「喜びの流れは永遠に」の、ぴたりとシンクロした歌唱は溜息ものです。 そして上演のクォリティを確かなものとしているのがレザール・フロリサンの合唱の素晴らしさ。オラトリオですので、合唱の比重は大きく、各幕に全11曲が配置されていますが、そのどれもがきめこまやかで実に精緻。カーテンコールでもソリストに負けない大きな拍手を浴びています。 [元のストーリー] 舞台は、まだキリスト教が国教として認められていなかった帝政ローマの時代。総督ヴァレンスは、皇帝の誕生日を、ローマの習慣に倣って祝うよう命じますが、敬虔なキリスト教徒の女性テオドーラは、異教徒の習慣に従うことを拒み捕らえられます。彼女を愛するがあまりキリスト教に改宗したローマ人将校ディディムスは、牢獄に忍び込み、テオドーラと衣服を交換して彼女を逃がします。それは当然露見し、ディディムスが処刑されると聞いたテオドーラは、自らヴァレンスのもとへ赴きます。互いに自らの命と引き換えに相手の助命を嘆願するテオドーラとディディムス。しかし願いは受け入れられることなく、二人は最後まで信仰を貫き処刑されることを選ぶのでした。 [出演]キャサリン・ワトソン(テオドーラ/ソプラノ)フィリップ・ジャルスキー(ディディムス/カウンターテナー)ステファニー・ドゥストラック(イレーネ/メゾ・ソプラノ)クレシミール・スパイサー(セプティミウス/テノール)キャラム・ソープ(ヴァレンス/バス)ショーン・クレイトン(使者/テノール) [演目]ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル:3部のオラトリオ『テオドーラ』HWV.68[台本]トマス・モレル[原作]ロバート・ボイルの小説『テオドーラとディディムスの殉教』[演出]スティーブン・ラングリッジ[振付]フィリップ・ジロドー[装置&衣裳]アリソン・チッティ[照明]ファブリス・ケブール[指揮]ウィリアム・クリスティ[演奏]レザール・フロリサン(合唱&管弦楽)[収録]2015年10月13日&16日シャゼリゼ劇場(パリ)[映像監督]オリヴィエ・シモネ ■字幕/全3部:約3時間5分

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