オランダ国立歌劇場2018『ホフマン物語』 Les Contes d’Hoffmann

配信開始:2020年04月19日 06:00

オペラ

  • 2時間55分
  • 2018
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21世紀の新校訂版による上演。鬼才トビアス・クラッツァーの攻めた演出と相まって、これまで見たことのない、新しい『ホフマン物語』が誕生!  『天国と地獄』で知られるフランス・オペレッタの大家ジャック・オッフェンバックが、その最晩年に勢力を傾けたグランド・オペラが『ホフマン物語』です。しかし初演の舞台稽古が始まるなか、未完の幕を残してオッフェンバックが急逝したために、他者の補作によるさまざまな版が並存していて、現在でも上演形態は複雑です。2018年6月にオランダ国立歌劇場で新制作された『ホフマン物語』は、近年注目を集めている21世紀の最新の校訂版であるケイ&ケック版を採用しました。しかしそれ以上に新しいのが、ドイツの鬼才トビアス・クラッツァーの斬新な演出。主人公のホフマンが過去の3人の女性たちとの悲劇的な恋を語る物語を、その枠組を残したまま、まるで不気味な心理サスペンスのように再構築しています。  この『ホフマン物語』には、学生たちが集まるニュルンベルクの騒々しい酒場も、ヴェネツィアのゴンドラも登場しません。物語の舞台は現代。ホフマン(ジョン・オズボーン)は、目下夢中になっている相手の歌姫ステッラを自宅の窓から盗撮するストーカー男。どうやら薬物中毒でもあるようです。通常メゾ・ソプラノが男装して歌い分ける親友ニクラウスとミューズ(アイリーン・ロバーツ)は、つねに、ホフマンに思いを寄せる一人の人間の女性として描かれ、妖艶な下着姿も演じています。  ホフマンの恋の相手である3人の女性たちの描き方にもひと工夫あります。エピローグの冒頭でミューズが歌うように、過去の3人の女性(オリンピア、アントニア、ジュリエッタ)はじつは一人の女性であり、それが現在の恋の相手のステッラなのだという不条理が台本の根底をなしており、それゆえ一人の歌手が全役を歌うのが正統だという考え方は少なくありません。しかしクラッツァーはそれを真逆に利用しました。オリンピア、アントニア、ジュリエッタには3人の歌手を起用。ただしエピローグでは、(旧版には出番がなく)ケイ&ケック版でようやく歌が与えられた歌姫ステッラのパートを、この3人に歌わせることで、女性たちの同一性を表現したのです。第2幕では自動人形のオランピアがAIロボットのように描かれていたり(スコアにはない、しばしば慣習的に登場する、途中でネジを巻き直す擬音は出てきません)、淫らな痴態を晒したり、また第3幕では、アントニアの亡母の声がじつはアナログ・レコードで、彼女はそれを砕き割って自らの喉に突き立てるというショッキングなシーンも。じつに刺激的な、新しい『ホフマン物語』です。  歌手陣ではなんといってもタイトルロールのジョン・オズボーンの甘く透明な美声が輝いています。先述のようにホフマンが徹底的なダメ人間として描かれているため、その声とのギャップもまた、なんとも不思議な不条理の世界を生み出します。  指揮はカルロ・リッツィ。1988年の東京国際指揮者コンクール第3位の彼は、いまや現代屈指のオペラ指揮者です。豊富な経験を持つリッツィですが、ある取材に答えて、すでに100を超えるオペラのレパトーリーがあるものの、『ホフマン物語』を指揮するのはこれが初めてだったと語っています。ケイ&ケック版の大きな魅力でもあるフィナーレの大合唱に向かって、音楽的な緊張を緩めることなく紡ぎあげる手腕はさすがといえるでしょう。たっぷりとお楽しみください。 [出演] ニーナ・ミネイジアン(オリンピア/ソプラノ) エルモネラ・ヤホ(アントニア/ソプラノ) クリスティン・ライス(ジュリエッタ/ソプラノ) アイリーン・ロバーツ(ミューズ/メゾ・ソプラノ) ジョン・オズボーン(ホフマン/テノール) エヴァ・クローン(アントニアの母/メゾ・ソプラノ) アーウィン・シュロット(リンドルフ、コッペリウス、ミラクル博士、ダペルトゥット/バリトン) ロドルフ・ブリアン(スパランツァーニ/テノール) ポール・ゲイ(ルーテル、クレスペル/バス) フランソワ・リス(シュレーミル/バス) サニーボーイ・ドラドラ(アンドレ、コシュニーユ、フランツ、ピティキナッチョ/テノール) マーク・オンブリー(ナタナエル/テノール) フレデリク・ベルクマン(ヘルマン/バス) アレクサンデル・デ・ヨン(ヴィルヘルム/バス) ペーター・アリンク(悪党のボス/バリトン) [演出]トビアス・クラッツァー [舞台装置・衣裳]ライナー・セルマイヤー [照明]ベルント・プルクラベク [指揮]カルロ・リッツィ [管弦楽]ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団 [合唱]オランダ国立歌劇場合唱団 [演目]ジャック・オッフェンバック:歌劇『ホフマン物語』全5幕 [収録]2018年6月 オランダ国立歌劇場 [映像監督]ミシェル・フェルメイレン ■字幕/2時間55分(番組枠)

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