トリノ王立歌劇場2016『ラ・ボエーム』 La Boheme

配信終了:2020年12月17日 23:59

オペラ

  • 1時間54分
  • 2016
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トリノ王立歌劇場-120年前にトスカニーニが初演した『ラ・ボエーム』が、その由緒ある劇場に21世紀の物語としてよみがえる。躍進中ソプラノのミミは抜群!  19世紀のパリに暮らす若者たちの青春群像と悲しい恋の結末を描いた『ラ・ボエーム』。世界中で愛され続ける名作の初演は1896年、トリノ王立歌劇場で、当時28歳の音楽監督アルトゥーロ・トスカニーニの指揮による上演でした。番組は2016年、そのトリノ王立歌劇場が、初演120年を記念してローマ歌劇場と共同制作した新演出上演の模様です。  トリノ王立歌劇場の『ラ・ボエーム』といえば、2010年の初来日公演を思い出される方も多いでしょう(ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ演出)。今回お届けするのは、スペイン・カタルーニャの前衛パフォーマンス集団「ラ・フラ・デルス・バウス」の演出家アレックス・オリエによる新演出です。1992年のバルセロナ・オリンピック開会式の演出を手がけたのが、オリエを中心とするラ・フラ・デルス・バウスのチーム。わたしたちの記憶に新しいところでは、2019年に新国立劇場と東京文化会館の共同制作による『トゥーランドット』もオリエの演出でした。  ステージ空間の縦方向を重層的に活用し、工事現場の鉄骨の足場のような、メカニカルでクールな舞台装置を組む手法は、オリエ演出の典型的な特色のひとつです。第1幕、幕が開くと舞台全面に鉄パイプの構造物が現れます。そこがロドルフォたち4人の若者が暮らすアパルトマン。彼らが住むのは、台本の設定の屋根裏部屋ではありません。上階にも部屋があり、そこにミミが仕事をしているのが見えます(第4幕では、いなくなったミミの代わりに別のカップルが住んでいます)。オリエは物語の時代設定を読み替え、詩人ロドルフォはパソコンで原稿を書き、ジーンズにスニーカーを履いたお針子ミミはミシンを使って縫いものをしています。二人が出会うシーンでも、消えたろうそくに灯をもらいに訪ねてくるミミに対して、ロドルフォは懐中電灯を持っています。オリエは言います。『ラ・ボエーム』は、現代でも変わることのない、失われた青春の歌。誰もが持っている、二度と戻らない情熱的でノスタルジックな記憶の物語であり、だからこそ、あらゆる年齢層の聴衆の心を掴むのだと。その言葉どおり、現代の物語として見てもなんら違和感のない、普遍的な説得力のあるプロダクションが実現されています。  歌手陣は高水準。なかでもモルドバ出身の赤丸急上昇中のソプラノ、イリーナ・ルングのミミが素晴らしい出来栄えです。2017年に日本の新国立劇場でも歌ったヴィオレッタ(『ラ・トラヴィアータ』)など、どちらかというとレッジェーロの役を当たり役とするルングですが、声質が少し変わりつつある時期なのかもしれません。ここではボディのしっかりした伸びのある美声を聴かせて、かつてこの役を得意としたレナータ・テバルディやミレッラ・フレーニの系譜に連なる、正統的なソプラノ・リリコとしての可能性を十分に示しています。相手役のロドルフォを演じているのはイタリアのテノール、ジョルジョ・ベッルージ。持ち前の美声と、特に後半2幕の激しい感情表現はお見事です。南アフリカ出身の黒人ソプラノ歌手キレボヒリ・ビーソンのムゼッタも印象的。小悪魔的な魅力というよりも、妖艶な大人の色っぽさで男たちを魅了します。指揮は収録当時の音楽監督(2007年から2018年まで)だったジャナンドレア・ノセダ。歌い手に寄り添いつつも振幅の大きな音楽を作って、圧倒的なドラマを表出しています。 [演目]ジャコモ・プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』全4幕 [演奏]ジャナンドレア・ノセダ(指揮)トリノ王立歌劇場管弦楽団 [出演] イリーナ・ルング(ミミ/ソプラノ) ジョルジョ・ベッルージ(ロドルフォ/テノール) キレボヒリ・ビーソン(ムゼッタ/ソプラノ) マッシモ・カヴァレッティ(マルチェッロ/バリトン) ベンジャミン・チョー(ショナール/バリトン) ガブリエーレ・サゴーナ(コッリーネ/バス) マッテオ・ペイローネ(ベノワ、アルチンドーロ/バス) カレン・ガンディ(パルピニョール/テノール) マウロ・バッラ(軍曹/バス) ダヴィデ・モッタ・フレ(税関吏/バリトン) [合唱] クラウディオ・フェノーリョ(合唱指揮) トリノ王立歌劇場合唱団 トリノ王立歌劇場児童合唱団 ジュゼッペ・ヴェルディ音楽院児童合唱団 [演出]アレックス・オリエ [舞台美術]アルフォンス・フロレス [照明]ウルス・シェーンバウム [衣裳]リュック・カステル [収録]2016年10月、トリノ王立歌劇場(ライヴ) [映像監督]ティツィアーノ・マンシーニ ■字幕/約1時間54分

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