ザルツブルク音楽祭2020『エレクトラ』 ELEKTRA

配信終了:2021年01月03日 23:59

オペラ

  • 2時間
  • 2020
  • -

逆境のなか、不屈の意志で開催された創立100周年のザルツブルク音楽祭開幕を飾った『エレクトラ』。  世界を覆う感染症の影響で大幅に規模を縮小して行なわれた2020年のザルツブルク音楽祭。一時は中止も危ぶまれるなか開催にこぎつけたのは、今年が音楽祭創立100周年の大きな節目の年だという譲れない事情もあったでしょう。特殊な状況下での開催のため、上演されたオペラは2作品のみ。番組ではそのうち、8月1日の開幕を飾った、フランツ・ウェルザー=メスト指揮、クシシュトフ・ワルリコフスキ演出によるリヒャルト・シュトラウスの歌劇『エレクトラ』上演の模様をお届けします。  ギリシャ神話のミケーネの王アガメムノンの娘エレクトラは、父を殺した母クリュテムネストラとその愛人への復讐を固く誓い、機会をうかがっています。妹クリソテミスが普通の女性としての平穏な幸せを望むので、エレクトラは一人で実行することを決意するのですが、そこへ、死んだと思われた弟オレストが現れ、姉に代わって復讐を果たします。エレクトラは狂喜して激しく踊り、そのまま息絶えます。      『エレクトラ』と同じアガメムノンの物語を題材としたギリシャ悲劇『オレステイア』(アイスキュロス作)に基づくもの。クリュテムネストラは過去に実の娘をアガメムノンの横暴によって失っているのですから(アガメムノンは長女イピゲネイアを女神への生贄とした)、夫を恨む理由は理解できなくもないのです。その意味で、母を恨むエレクトラと彼女は似ています。二人の赤い衣裳はその同質性を表現しているかもしれません。  タイトル・ロールのエレクトラ役は、劇的な表現が求められるうえに、甘美で抒情的な旋律も与えられているドラマティック・ソプラノ屈指の難役です。一方で、ドラマが佳境を迎える直前、弟との再会の喜びを噛み締めるように歌う官能的な「オレスト、オレスト!」の美しさは大きな聴きどころです。昨秋には『サロメ』役でウィーン国立歌劇場デビューも飾った彼女は、日本でも大野和士&東京都交響楽団とワーグナーやツェムリンスキーを歌ったのが記憶に新しいところ。現在最も注目されるソプラノの一人です。    シュトラウスの音楽は、ときに調性の枠を大きく逸脱して登場人物の多様な心理を表現しています。オーケストラの規模は巨大。クラリネット8人、ホルン8人、トランペット7人を含む管楽器群に、ヴァイオリン4部、ヴィオラ3部、チェロ2部とコントラバスという特殊な弦楽パートで、スコアには約110人の奏者が指定されている、オペラとしては異例の大規模編成です。凶悪な咆哮から美しい繊細な表情まで、ウェルザー=メストがウィーン・フィルから多彩な音色を引き出しているのが、映像の音声からもはっきりと聴き取ることができます。     [演目]リヒャルト・シュトラウス:1幕の悲劇『エレクトラ』 [指揮]フランツ・ウェルザー=メスト [管弦楽]ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 [合唱]ウィーン国立歌劇場合唱団(合唱指揮=エルンスト・ラッフェルスベルガー) [演出]クシシュトフ・ワルリコフスキ [舞台&衣裳]マウゴルザータ・シシュニチャック [照明]フェリス・ロス [振付]クロード・バルドゥイユ [ドラマトゥルグ]クリスティアン・ロンシャン [出演] ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー(メソ・ソプラノ/クリュテムネストラ) アウシュリネ・ストゥンディーテ(ソプラノ/エレクトラ) アスミク・グリゴリアン(ソプラノ/クリソテミス) ミヒャエル・ラウレンツ(テノール/エギスト) デレク・ウェルトン(バス・バリトン/オレスト) ティルマン・レンネベック(バス/オレストの養育者) ヴェリティ・ウィンゲイト(ソプラノ/クリュテムネストラの裾持ちの女) ヴァレリヤ・サヴィンスカヤ(ソプラノ/クリュテムネストラの侍女) マトイス・シュミットレヒナー(テノール/若い従僕) イェンス・ラーセン(バス/年老いた従僕) ソーニャ・シャリッチ(ソプラノ/監視の女) ボニータ・ハイマン(メゾ・コントラルト/5人の召使)、ケイティ・コヴェントリー(メソ・ソプラノ/5人の召使)、デニズ・ウズン(メゾ・ソプラノ/5人の召使)、シネイド・キャンベル=ウォレス(ソプラノ/5人の召使)、ナタリア・タナジー(ソプラノ/5人の召使) [収録]2020年8月、ザルツブルク、フェルゼンライトシューレ [映像監督]ミリアム・ホイヤー

おすすめ