カラヤン&ベルリン・フィル『ベートーヴェン:第九』1968 Beethoven, Symphony No. 9 in D minor, Op. 125

配信開始:2020年12月12日 06:00

コンサート

  • 1時間5分
  • 1968
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50年経った現在も鮮度を失うことのない、帝王カラヤンの、荘厳ながら知的で端正な運びにあらためて脱帽。綺羅星のごときスター歌手が競う終楽章は圧巻。  生誕250周年のベートーヴェン・イヤーを締めくくるのにふさわしい、カラヤン&ベルリン・フィルの『第九』です。20世紀のクラシック音楽界に君臨した「帝王」ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)は、その生涯にベートーヴェンの交響曲全曲を4度録音し、2度の映像による全集も残しています。『第九』の自筆譜がユネスコの「世界の記憶」に登録されているのと同様に、そのどれもが世界遺産級の金字塔。番組では、1960年代末から1970年代にかけて制作された、映像による第一期の交響曲全集から、交響曲第9番『合唱』をお届けします。  カラヤンは1965年に映像制作会社「コスモテル」を設立して、映像による音楽作品制作の方法を模索しました。ポップスのマーケットでさえ、いわゆる「ミュージック・ビデオ」が盛んに作られるようになるのは1980年代からですから、その鋭い先見性にはあらためて驚かされます。彼が映像の力を実感したのは、1957年にベルリン・フィルとともに来日した際、NHKが中継した彼らのコンサート映像を、食い入るように見つめる日本のファンの姿だったといいます。  番組の『第九』が収録されたのは1963年に落成したベルリン・フィルハーモニーホール。客席に聴衆のいるカットも挿入されていますが、多彩なカメラワークや通常のコンサートでは難しそうなライティングなどを考えても、ライヴ収録ではなく、ほとんどはセッションで収録されたはずです。カラヤンが求めたのは、単なるコンサートの記録ライヴ映像ではなく、あくまでも映像による新たな音楽表現の可能性でした。カラヤン自身の指揮姿を中心に、個々の奏者を映すのではなく、彼らの奏する「楽器」にフォーカスして頻繁に入れ替わるカット割りからは、そんなカラヤンの挑戦が伝わってきます。面白いのは第2楽章で、トリオのあと、ダ・カーポ(始めに戻る)した途端に映像がカラーからモノクロに変わります。回想シーンのような意味を込めているのでしょう。  カラヤンのアプローチは、あくまでも神々しく厳粛なベートーヴェンですが、テンポ設定などは19世紀的な仰々しい恣意的なアプローチではなく、知的でモダン。その鋭敏なセンスにはあらためて脱帽させられます。  第4楽章の独唱陣は圧巻です。グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)、クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)、ジェス・トーマス(テノール)、ヴァルター・ベリー(バリトン)。ヴェテラン・ファンには懐かしい、カラヤンの重用した往年のスター歌手たちが綺羅星のごとく並んでいる様子だけでも壮観ですが、その歌声の素晴らしいこと。声楽界はいつの世も百花繚乱ではありますが、この時期が黄金期のひとつだったのは間違いありません。  合唱はベルリン・ドイツ・オペラ合唱団。撮影用だけかもしれませんが、舞台背面のポディウム席から舞台左右の2階席まで180度にびっしり配置された合唱団の姿には圧倒されます。 [曲目]ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調Op. 125『合唱』 [演奏] ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ) クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ) ジェス・トーマス(テノール) ヴァルター・ベリー(バリトン) ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団(合唱指揮=ヴァルター・ハーゲン=グロル) [収録]1968年 ベルリン、フィルハーモニーホール [映像監督]エルンスト・ヴィルト

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